公正証書遺言とは

確かな遺言書を作成する方法として、公正証書遺言という方法があります。公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2人の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、遺言者の真意であることを確認します。公証人は、これを文章にまとめ、遺言者と証人2人に読み聞かせまたは閲覧させて、内容に間違いがないことを確認して、遺言公正証書として作成します。

遺言の内容について、公証人が、親身になって相談を受け、必要な助言をしますので、遺言者にとって、遺言者の意向に沿った遺言書を作成することができます。なお、遺言の目的である財産の価額に対応する形で、手数料がかかります。公正証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認の必要がないので、相続開始後ただちに遺言を執行できます。また、その遺言の原本が公証役場に保管されるので、紛失のおそれや改ざんの心配はありません

公正証書遺言の作成手順

公証人との相談

まず、公証人に、相談に行くことになります。相談日時については、事前に電話等で調整することになります。相談内容のメモ(遺言者がどのような財産を有していて、それを誰にどのような割合で相続させ、または遺贈したいと考えているのかなどを記載したメモ)を用意します。

また、次の資料を準備すると打合せがスムーズに進むことになります。(これらの資料は、公証人がコピーをとったあと、原本は返してもらえます。)

●遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書(ただし、印鑑登録証明書に代えて、運転免許証、旅券、マイナンバーカード(個人番号カード)を遺言者の本人確認資料にすることができます。)

●遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本

●財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの。法人の場合には、その法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)

●不動産の相続の場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書

●預貯金等の相続の場合には、その預貯金通帳等またはその通帳のコピー

遺言公正証書(案)の作成と修正

公証人は、提出されたメモおよび必要資料に基づき、遺言公正証書(案)を作成し、メール等により、それを遺言者等に提示します。遺言者が見て、修正したい箇所を摘示すれば、公証人は、それに従って遺言公正証書(案)を修正し、確定します。

遺言公正証書の作成日時の確定

遺言公正証書(案)が確定した後、公証役場と連絡をとり、遺言者が公正証書遺言をする日時を確定します。

遺言の当日の手続

遺言当日には、遺言者本人から公証人に対し、証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げます。

(1)証人
証人2名はいずれも、遺言者が手配することができますが、
① 未成年者
② 推定相続人
③ 遺贈を受ける者
④ 推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族等
は、証人になることができません。

したがって、証人は遺言者と全く親戚関係のない人になってもらうのが無難と言えます。適当な証人が見当たらない場合には、公証役場のほうに紹介してもらうことも可能です。

(2)公正証書遺言作成当日に必要なもの
当日必要なものは、手数料と、遺言者の実印(本人性の確認が印鑑登録証明書の場合は実印が必要ですが、その他(マイナンバーカード等)で確認する場合は認印でも可)と証人2名の認印。

(3)遺言公正証書の作成
公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認した上で、遺言公正証書(案)に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、遺言の内容に間違いがないことを確認します。

遺言の内容に間違いがない場合には、遺言者および証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印をします。そして、公証人も、遺言公正証書の原本に署名し、職印を押すことによって、遺言公正証書が完成します。

原本は公証役場で保管します。そして、正本、謄本に公証人が署名し、これに職印を押したものが渡されます。